村田町の倉庫では、O様邸の材料準備が進行中です。
坂元植林の家では、大工さんの手加工で材料を加工しています。
(全ての現場ではなく、お客さまのご予算や建てられる木の家の種類に合わせ、
手刻みと、工場での加工(プレカット)を使い分けています。)
現代日本の木の家の90%以上がプレカットで、手刻みは10%以下と聞いたことがありますが、
実際はもっと手刻みの割合は少ないのではないでしょうか。
坂元植林の家では、その年によって割合は変わりますが、今年は全体の3分の1ほどが手刻みの木の家となりました。
手刻みとプレカットの違い、それぞれのメリット、デメリットは、
加工にかかる時間・加工の精度・可能な木の組み方・使うことのできる材料の形状…などなど、
いろいろあるのですが、
坂元植林の家で特に注目しているのは、
「木材1本1本の特性・強みを生かすためには、手刻みが向いている」
ということです。
柱の木口(木材の年輪の見える側の断面)に様々な文字と記号が書いてあるのがわかると思います。
さて、この意味が分かるでしょうか。
書いてあるのは(上)(ム)漢数字の(一)~(四)と記号(「 )。
ヒントは(上)と(ム)は同一の材料には書いてない。
数字は1~4まで。
…
答えは、
「上」=「上小節」という建築用語で、節が比較的少ない材料であることをあらわす言葉です。
「ム」=「無節」という建築用語で、節がない材料であることを示す言葉です。
漢数字は、化粧として使うことのできる面がいくつあるかを示し、
(「 )の記号は、化粧として使うことのできる面がどこにあるかを示しています。
さらに、これらの柱には「背割り」という割れ防止の処置がしてあります。
背割り:木材課の三浦課長のブログを参照
よくよく見ると、右下のほうの柱は、背割りがされていません。
さて、なぜでしょうか。
ヒントは木目です。よーく見てみましょう。
…答えは、
背割りのしてある材料は、木の芯のある材料(=芯持ち材)で、
背割りのない材料は、木の芯のない材料(=芯去り材)
ということです。
芯の中心に近い部分(=赤太)は丸太の周辺部分(=白太)と比べて強度が高いため、
芯持ち材のほうが強度は高いといえますが、
周辺のほうが内部より乾きにくく、その渇きの差で割れが出やすく、割れを防ぐためにあらかじめ背割りを入れています。
1本1本をよく見ると、背割りの開き方が違うのがわかります。
同じ時期に切った木でも、同じように乾燥させた木でも、同じように乾燥するわけではないのです。
その木が育った環境で、同じ種類のスギでも、乾き方も違えば、曲がり方も節も、
全てが違います。
これが「無垢材」ということです。
化粧の梁。節が少なくて美しいですね!このくらいの節の量だと「上小節」くらいでしょうか。
棟梁が手板を入念にチェック。1枚目の写真のように、木材の特徴を見極め、どこに使うともっとも美しく出来上がるかを考え、材料をどこへどう使うかを考えます。
書き込んで仕事の状況を確認。
ミリ単位の繊細な工程です。
坂元植林の家では30代、40代と若い手刻みのできる大工さんが働いてくださっています。
真剣な眼差し!
こちらは、別の場所で手加工するために、梱包して運搬準備が完了しています。
木口を見てどんな材料かわかるようになっています。
ピシッと、きれいに梱包されています。
太鼓梁です。太鼓みたいな形に両端を落としているのでそう呼ばれます。
この材料は、この状態で使うことはできません。
なぜでしょうか。
ピンクの補助線を引いてみると、わかるかもしれません。
このように、手前は時計回りにねじれ、奥は反時計回りにねじれています。
乾燥の過程でねじれが出たため、もう一度製材所で製材し、ゆがみを取る製材を行います。
…
効率やコストが優先される機械による加工では、
ここに紹介してきたような、
木の反りや節の量、木目の美しい面がどこにあるか…などといった
1本1本の特徴・いいところ・苦手なところに、
丁寧に寄り添って仕事をすることは難しいかもしれません。
工場で作る、品質の安定した工業製品のような家も素晴らしいですが、
私たちは、1本1本違う表情とカタチをもった、
自然が育てた無垢の木で家を作っているので、
1本1本に寄り添う丁寧な手仕事が必要になるのです。
持続可能でもなく、体にも悪影響のあるかもしれない素材を使って、
大量に、廉価に、素早く家づくりすることもできますが、
林業を母体とし、森の恵み、地域のつながりに生かされてきた私たちは、
持続可能で、地球環境にも、人の体にも、地域の経済にもやさしい素材を使い、
たくさんではありませんが、地域の経済や自然を守れるだけのお金をいただき、丁寧に家づくりをしたいと思っています。