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手仕事と、大工さんがいなくなっていく問題

里山の生活体験拠点の整備計画「成田プロジェクト」が着々と進行中です。

先月から今月初旬まで、
建物の構造に使われる木材の加工準備作業である「墨付け」が行われておりました。

「墨付け」というのは、大工さんが木材を加工をするための目印をつける作業のことです。
その目印に合わせて大工さんがノミなど刃物などを使って加工することを「刻み」といいます。

墨付けは、
その木材を、よく「見る」ことから始まります。

写真の撮り方が下手でよくわからない写真になってしまいましたが、
ピントの合っているところをよく見ると、
膨らんでいるように見えませんか?

実際に肉眼で注意深く見ると、若干材料が曲がっていることがわかりました。


製材や仕上げのカンナ掛けなどが終わった後には、まっすぐだった材料も、
時間の経過とともに乾燥が進んだり、天候や気候、湿度や温度によって、
反りや曲がりが発生することがあります。

これらの反りや曲がりが、どこにあるのか、
それらをどう使えば建物にとって良いか、
どう使えば建物が美しくなるか、
それらを考えながら、材料を吟味していきます。

その吟味が終わると、
実際に木材に印をつけていきます。

「墨付け」という言葉の通り、墨を使って行うことが多いようです。
この写真に写っているのは「墨つぼ」という昔ながらの道具です。


この写真では、2人組で、息を合わせ、
複雑な部分は綿密に打ち合わせをしながら墨付けをしています。

一般的には墨付けは1人で行うことが多いそうです。
複数の手で行うと混乱したりして間違いのもとになるからです。

この現場では、先輩大工さんが、後輩の大工さんに指導しながら、
技術を伝承しながら加工を進めています。

手刻みのできる若い大工さんは確実に減っているので、
こうして技術を継いでいくことはとても大事なことです。

こんな記事がありました。
大工の人数は2030年21万人に 野村総研が予測
1980年代のピーク時に90万人以上いた大工さんが、
50年後の2030年には21万人にまで減ってしまうという予測があるそうです。
ピーク時の8割近くが失われることになります。

仕事自体がなくなっている職業なら、炭鉱の仕事とか、いろいろあると思いますが、
ここまで劇的に減ってしまう職業人口って他にないんじゃないでしょうか。

住宅の年間着工戸数は2018年には95万戸で、2030年には63万戸までに減るといわれています。
とはいえ、新築は減ってもリフォームの仕事は横ばいか増えていくと予想されていますので、
大工さんが不足していくことは目に見えています。

また、調べてみるとこんな調査結果が見つかりました。
平成 24 年度 住宅市場技術基盤強化推進事業 「木造住宅・木造建築物の性能及び生産性向上等のための調査検討・普及事業」 ~大工・職人の実態に関するアンケート調査~ 報告書
この報告書によると、
「今でも手刻み加工の仕事を年1棟以上行っているか」という質問に対して、
「5 割以上が行っていない」という回答だそうです。

また、
「年齢層が上がるにつれて手刻み加工の仕事を行っている割合は増加しており、70 代以上で
44.8%と最も多く、10 代が 14.3%で最も少ない。
手刻み加工の仕事を行っている割合の全体平均値 31.6%を上回るのは 50 代以上であった。
若年層が手刻み加工の仕事に触れる機会は年長者よりも少なく、そのために、ますます技能
が習得しづらい状況が進んでいると考えられる。」

なんてことが書いてあり、
同じページの表には、手刻み加工の仕事を行っている20代の割合は27.2%と書いてありました。

JBNのレポートによると、
2015年時点で、20代の大工は3万1740人、10代の大工は2150人しかいないという状況だそうなので、

推測しながら計算してみると、
10代の大工さんの人口は2,000人くらいで、
そのうち手刻みができるのは、14.3%なので、300人以下。
20代の大工さんの人口は30,000人くらいで、
そのうち手刻みができるのは、27.2%なので、8000人くらい。


この記事を読まれている方は、どう思うのでしょうか。

さて、
こんな大工さんを取り巻く課題に対して、
大工がいない。住宅着工の減少よりも速く進む大工不足問題。
という記事を見つけました。

いろんな解決策があるのだと思いますが、

私たちが目指しているような、木の家を素敵だと思ってくれるお客さまが増えれば、
おのずと、本物の素材を扱うことのできる大工さんは増えていくのだと思います。

坂元植林の家では、大工さん2名に社員になっていただきました。

親方として生きていく大工・職人のあり方、
組織の一員として生きる大工・職人のあり方、
様々な形があると思います。

いずれにしても、
・家を求めるお客さま
・木材を生み出す山、森、自然
・お客さまと家、森、職人をつなげる工務店のスタッフ(営業・設計・工事・メンテナンス部門)
・家を作り上げる職人

これらの登場人物みんなが、
楽しく、豊かに、いきいきと仕事ができる(生きていく、暮らす)ことのできる世界になればいい、
そうしたい、と思いました。


コロナウィルス感染症の拡大防止のため、
当初予定していた様々なイベントやワークショップを中止しております。

普段あまりテレビを見ないのですが、
世界中に拡散し、国によっては移動の制限や閉鎖まで行われているようです。

感染する人が一人でも少なく、
重症化して亡くなってしまう人が一人でも少なく、

経済活動の縮小で困窮する人が一人でも少なく、

一刻も早く収束し、
普段の生活に戻れますように。

それぞれが最善と思うことをしていきましょう。