スタッフブログ

里山での新拠点整備 さとのえ7 エネルギー棟の古材加工

7/11に、いよいよ上棟を迎える「さとのえエネルギー棟」

坂元植林の家の社員大工のお二人が、
松の古材を使った骨組みの加工をしていました。

通常の材と比べて水平垂直が図りにくいため、通常より1本あたり2倍以上の時間がかかることもあるそう。

 

とはいえ、古材と新材が組み合った様は、なんともいえない美を感じます。

様々な解体現場などからストックしている古材があり、
用いるのには苦労しますが、中にはそれだけの価値のある材があります。

特に今回の松などは、日本中あちこちで見かける一般的な針葉樹の一種であり、
和歌や日本画など、あらゆる場面で登場する、日本を代表する樹の一つだと思います。

特に海沿いの強風から住まいや農地を守るために設けられた防風林・防砂林は、
多くの方々のイメージにあるのではないでしょうか。

東北森林管理局によると、昭和40年代に松くい虫被害が発生し、数年の間に拡大し、東北では昭和50年代に宮城県で被害が初めて確認され、
その後、他県へと徐々に被害が拡大しているそうです。

坂元の森や柴田の道路沿いの山林を眺めていても、
枯れてしまった松を見かけ、少し悲しい気持ちになります。

そもそもこれらの松枯れ被害は、「マツノマダラカミキリ(昆虫)」が、
病原体となる外来種の「マツノザイセンチュウ(線虫)」を健全なマツに運び、
マツの内部にマツノザイセンチュウが侵入することにより、マツを枯らしてしまう伝染病です。「松くい虫」という名前の虫がいる訳ではありません。
アカマツとクロマツの両種とも感染し、一度感染して枯れてしてしまうと、回復することはありません。

マツノザイセンチュウというのは、長さ1mm位の線虫(ミミズを小さく、透明にしたようなもの)で、北アメリカから入ってきた生物です。
この生物が、マツの幹の中で増えてくると水の通り道をふさいでしまいます。そのため、マツの葉が急に赤くなって枯れてしまうのだそうです。
でも、マツノザイセンチュウは自分で元気なマツの木まで飛んでいくことができません。

マツノザイセンチュウはマツノマダラカミキリをうまく利用して元気の良いマツにとりつき、
マツを枯らすほど数を増やしながら,また次のマツノマダラカミキリの体に乗って次々に広がっていきます。

マツノザイセンチュウはもともと北アメリカにいたもので、北アメリカでは元気なマツを枯らすことはないようです。

これは,長い間にマツとセンチュウの関係がうまくできあがり、弱ったマツを少しだけ枯らすことで、
マツもなくならない、線虫もいなくならない生命の仕組みになっているからです。

日本のアカマツやクロマツは、マツノザイセンチュウと出会って100年くらいしかたっていませんので、抵抗力がほとんどないのだそうです。
アメリカでもヨーロッパ原産のマツはマツノザイセンチュウによって枯らされてしまうそうです。

こういったことがあるので、外来種の取り扱いは、慎重にならなくてはならないのだと思います。

話が長くなりましたが、
こういったわけで松材を新たに入手することは比較的難しくなってきています。

ですが、スギやヒノキと比べてもマツは強度が高く、粘り強いことから、
家の重さを支える梁(はり)や桁(けた)といった横架材として活用されます。

ねじれや曲り、松脂(まつやに)など、用いるうえで注意の必要な点はあるにせよ、
先に挙げた強度にしても、独特の香り、木目にしても、優れた材であることに変わりはありません。
そんな松の古材を使ったエネルギー棟。
ぜひ見においでください。

以前の「さとのえ」の記事はこちら
里山での新拠点整備 さとのえ
里山での新拠点整備 さとのえ2
里山での新拠点整備 さとのえ3
里山での新拠点整備 さとのえ4
里山での新拠点整備 さとのえ5 竹割りワークショップ
正直で美しい建築
セイタカアワダチソウの除草
里山での新拠点整備 さとのえ6